男性ホルモンばかりではないaga進行の原因育毛の基礎知識

男性ホルモンはAGAの天敵じゃない!その実情とは

男性ホルモンばかりではないaga進行の原因

AGAの原因はなにかと問われて、「男性ホルモン」だと反射的に答える人は多いです。しかし、実際には男性ホルモンそのものは男性にとって(女性にとっても)非常に重要で、その量を減らすような行為は、健康にいいものではありません。AGAが発症する大きな要因は、男性ホルモンに作用し、強力な脱毛ホルモンへと変えてしまう還元酵素にあるのです。

AGAの発症に関係している原因は男性ホルモンだけ?

AGAが発症する原因と呼べるものは、いろいろな説があります。それらにすべて対応しようとするのは現実的ではありませんし、対応すべき方法もあいまいになりがちです。ただし、実際に医学的な裏付けのあるものはそれほど多くありません。それらを理解することで、AGAの発症を防いだり、進行を止めたりするための積極的な行動を起こすことができるのです。

髪の成長とAGAの発症メカニズム

まずは、髪の成長とAGAの発症メカニズムについて簡単に解説しておきましょう。髪の毛のライフサイクル(ヘアサイクル)は、次のような流れで、4年から7年ほどの時間をかけて生え変わるのが一般的です。

  1. 成長期(4年から6年)
    毛根にある「毛乳頭」が、「毛母細胞」に成長を促し、毛母細胞が増殖することで、髪が伸びていく時期です。この時期が長ければ長いほど、髪は長く太くなっていきます。
  2. 退行期(2週間から3週間)
    髪の毛の成長が止まります。
  3. 休止期(数ヶ月)
    毛穴の奥で次の髪の毛が成長し始め、古い髪の毛を押し上げていきます。結果、古い髪の毛は抜け落ち、新しい髪の毛が顔を出します。

AGAは、何らかの原因で、成長期が短くなることによって起こります。つまり、髪の毛が十分に伸びることなく成長を止め、抜け落ちるのです。

このヘアサイクルを狂わせる要因が、AGAの原因ということなのです。

原因1.遺伝

AGAの原因は、遺伝要因が大きいと言われています。しかし、やみくもに父親や祖父の頭と比較しても仕方ありません。それよりも、何が遺伝することでAGA発症のリスクが高まるのかを知っておく必要があるのです。AGA発症の要因として遺伝するものは、以下の2つと言われています。

1.「アンドロゲン受容体の感度」

「アンドロゲン受容体の感度」は、母親から遺伝するものです。毛乳頭に多く存在するアンドロゲン受容体が、脱毛ホルモン「ジヒドロテストステロン(DHT)」にどれだけ反応しやすいか、という敏感さが遺伝するのです。

このアンドロゲン受容体がDHTに反応すると、毛乳頭が毛母細胞に対して増殖を止めるよう指示を出します。すると成長期がそこで終わり、髪が成長しきる前に抜け落ち始めます。これが、AGAの発症です。

つまり、「アンドロゲン受容体の感度」が高いという性質を遺伝してしまうと、AGAを発症する確率が上がってしまうのです。

2.「5αリダクターゼの活性度の高さ」

そもそも、脱毛ホルモンのDHTは、どこから来るのでしょうか? その答えがこの還元酵素「5αリダクターゼ」なのです。

先程から、男性ホルモン(テストステロン)がAGAの直接的な原因でないことは説明しています。しかし実際のところ、男性的な特徴が強い人ほど薄毛の兆候が見られるのは確かです。それは、テストステロンがDHTの材料になっているからに他なりません。つまり、テストステロンが多い人は、どうしてもDHTも多くなってしまいがちなのです。

しかし、テストステロンが勝手にDHTになるわけではありません。テストステロンがDHTになるためには、そのスイッチが必要なのです。それが、還元酵素「5αリダクターゼ」であり、5αリダクターゼの活性度が高ければ、その分多くのテストステロンをDHTへ変えることができるのです。

なお、仮にテストステロンが少ない人であっても、5αリダクターゼの活性度が高ければDHTが数多く生成されてしまい、AGAを発症しやすくなります。

残念ながら、この「5αリダクターゼの活性度の高さ」という性質は、両親どちらからでも、より活性度の高い性質を引き継いでしまいます。

原因2.生活習慣

不摂生がagaを悪化させてしまう遺伝要因は確かに大きな部分を占めていますが、それでも上記の要因を遺伝した人全員がAGAを早くから発症するわけではありません。むしろ、生活習慣がトリガとなって、一気にAGAが進む場合のほうが多いのです。

毛母細胞が増殖するためには、当然ながら酸素と栄養が必要です。そして、それらの栄養素を毛母細胞まで運んでいるのは頭皮に張り巡らされている毛細血管です。

生活の営みがAGAを進行へと導きます

睡眠不足や栄養の偏り、喫煙、ストレスなどは、その毛細血管を縮める大きな要因となります。また、雑な洗髪で傷付いたり洗い過ぎたりして、頭皮の皮脂の分泌バランスが崩れることでも、頭皮が硬くなって頭皮の血行が悪くなり、毛細血管が失われていきます。

栄養素がなければ、毛母細胞は増殖できません。そんな状態では、髪の成長期が短くなってしまうのは当然でしょう。

原因3.男性ホルモン

男性ホルモン(テストステロン)が、AGAの強力な発症要因である脱毛ホルモン(DHT)に変わることは説明しました。ここで安易な考えであれば、「テストステロンがなければ、DHTができない」のだから、「テストステロンを減らせばいい」ということになるでしょう。しかし、それは非常に危険な対策です。

男性ホルモンのテストステロンは大切です

テストステロンは男性が男性らしくあるためのホルモンであり、筋肉質な身体や男性らしい精神を維持して、心身のバランスを保っています。また、女性であれば、肌のハリなどのアンチエイジング効果によって、若々しい身体を保つ一端を担っています。

そのため、テストステロンを減らすという行為は、そのまま健康を損なうことにつながります。やり過ぎると、性欲減退、男性機能障害、乳房の発達などの女性化が起こり、心身のバランスが崩れて精神的にもダメージを負うことになります。そんな状態では、AGA治療どころではないでしょう。

男性ホルモンは直接AGAに悪さをしているわけではない

男性ホルモン(テストステロン)は、AGAの原因になるどころか、心身の健康に重要な役割を担っています。もちろん、直接的なAGAの原因になることもありません。そのため、テストステロンそのものに何か対処をするのは、リスクが大き過ぎるのです。

重要なのは、テストステロンを減らすことではなく、脱毛ホルモン(DHT)を増やさないようにすることです。

還元酵素5αリダクターゼによるホルモンの変質

繰り返しますが、テストステロンは何も悪さをしません。AGAの要因となるのは、テストステロンが変質したDHTなのです。

では、DHTはどこから来るのか? これもすでに書いていますが、DHTは、テストステロンが還元酵素の「5αリダクターゼ」に活性化されることで生まれます。

この点に着目することで、自ずと対策が見えてくるでしょう。

AGAを抑えるには?

結局のところ、AGAの発症や進行を抑えるには、脱毛ホルモンであるDHTの生成を抑えることが重要なのです。そうすることができれば、毛乳頭は毛母細胞に対して成長を止めるような指令を発することなく、健康なヘアサイクルを保つことができます。

5αリダクターゼを減少させたい

テストステロンが還元酵素によって活性化することでDHTが生成されます。そのメカニズムが分かった上で、テストステロンを減らさずにDHTの生成を抑えるには、還元酵素を減らすか弱らせるしかないでしょう。

実際のところ、現在行われているAGA治療の幾つかは、この方法で成果を上げているのです。

AGAにアプローチする治療薬とは

ここまでに紹介したAGAの要因に対して効果的な治療薬を紹介します。

フィナステリド

世界で初めての飲むAGA治療薬として有名な「プロペシア」の有効成分です。「5α還元酵素Ⅱ型阻害剤」とも呼ばれていて、5αリダクターゼの一種であるⅡ型5αリダクターゼの働きを阻害する(弱らせる)もので、テストステロンがDHTへ変質することを防ぐことができます。

Ⅱ型5αリダクターゼは毛乳頭のそばに多く存在しますので、フィナステリドが選択的にそれらに作用することでAGAの発症や進行を防ぐことが期待でき、実際の臨床試験でもプロペシアは十分に優位な結果を出しています。(日本での臨床試験では3年間服用した人の78%に改善が見られました)

デュタステリド

フィナステリドでは効果のないⅠ型5αリダクターゼの働きを阻害することができるAGA治療薬です。Ⅱ型5αリダクターゼに対しても、フィナステリドよりも高い阻害効果を持っているため、AGA対策としては非常に期待できます。

しかし、その効果の高さもあり、副作用の発生率も高い傾向があると言われています。そのため、まずはフィナステリドを服用して、それでも効果が見られなければデュタステリドに切り替えるといった使い方が一般的なようです。

なお、デュタステリドは最近まで厚生労働省の認可を得ていなかったため、公式には使用することができませんでした。しかし、2015年9月28日に厚生労働省からAGA治療薬として認可され、現在は「ザガーロ」という名称で流通しています。